企業がWebサイトを運営する際、セキュリティ強化やサーバーダウン対策は不可欠です。
対策の一環として、多くの企業がCDNを導入しています。
数あるCDNのなかでも、Cloudflare(クラウドフレア)は特に利用者が多いサービスとして有名です。
Cloudflareは高度なセキュリティ性とスピーディーなコンテンツ配信が実現できるため、多くの企業で導入されているCDNです。
本記事では、Cloudflareを導入するメリットや、具体的な機能などについて解説します。
Cloudflareの使い方や料金プランなども紹介するので、導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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Cloudflareの概要

Cloudflareとは、Webサイトの表示速度の改善や、セキュリティの強化に役立つCDNの一種です。
そもそもCDNは「Content Delivery Network」の略称であり、日本語では「コンテンツ配信ネットワーク」と訳されます。
CDNはWebサイト上のコンテンツを複製・保存し、最適な経路で提供するためのネットワークです。
適切に活用すれば、Webサイトの表示速度を改善し、UXの向上を実現できます。
2010年にサービスが開始されたCloudflareは、元々はスパムメールを追跡する「Project Honey Pot」と呼ばれるシステムが前身です。
Project Honey Potのシステムをさらに発展させ、高いセキュリティ性を持つCloudflareが誕生しました。
W3C Techの調査によると、Cloudflareは世界シェア1位のサービスです。
Cloudflareは「より良いインターネットの構築」をミッションとしており、世界各国で利用者を増やしています。
今後もCloudflareは高いシェアを維持し続けるでしょう。
参照:では、Cloudflareとは何でしょう?|Cloudflare
Cloudflareの特徴

Cloudflareの特徴は、以下の3点に集約されます。
- 大規模なネットワーク基盤を持つ
- さまざまな機能を搭載している
- セキュリティ性が高い
本章ではCloudflareの特徴を解説します。
大規模なネットワーク基盤を持つ
Cloudflareは世界中の335以上の都市にデータセンターを配置し独自のグローバルネットワークを形成しています。
さらに主要なクラウドプロバイダーと直接接続するだけでなく、多数のサービスプロバイダーと相互接続しています。
そのため、ユーザーがどこからアクセスしてもパフォーマンスが変わりません。
Cloudflareのネットワーク基盤はエッジネットワークと呼ばれ、遅延やサーバーの負担軽減に効果を発揮します。
さまざまな機能を搭載している
Cloudflareはさまざまな機能を搭載しています。
複数人でコンテンツの管理ができるマルチユーザー管理・画像変換ツール・順番待ちができる待機室など、CloudflareはWebサイトをスムーズに管理・運用できる機能が豊富です。
加えて、昨今のAIの進展に伴い、生成AIサービスやセキュリティ用のAIなどが実装されています。
Cloudflareは新たな機能の搭載や、従来の機能の改善を積極的に実践しています。
セキュリティ性が高い
Cloudflareはセキュリティ性の高さが最大の魅力です。以下のようなセキュリティ対策を提供しています。
Cloudflareのセキュリティ対策は、通常のファイアウォールで防げないサイバー攻撃に対応できます。
加えて、いずれのセキュリティ対策も、Cloudflareにデフォルトで搭載されているものです。
そのため、複雑な設定をする必要がありません。
Cloudflareの主な活用事例

先述したように、Cloudflareはさまざまな企業で活用されています。
本章ではCloudflareの活用事例として、以下の3社を紹介します。
- JCB|Cloudflareの導入でコストの最適化に成功
- DeNA|リモートワーク用にCloudflareで信頼できる接続を実現
- Money Forward|セキュリティ対策にCloudflareを活用
それぞれ順番に解説します。
JCB|Cloudflareの導入でコストの最適化に成功
日本のクレジットカードブランドであるJCBは、代理店のDigiCertの協力を得て、2021年からCloudflareの利用を開始しました。
元々JCBはCloudflareとは異なるCDNや、DDoS攻撃対策製品を利用していました。
しかし、サービス内容に対する費用対効果に課題があり、新たなCDNの導入を検討しています。
JCBはCloudflareが日本法人を設立したタイミングで導入を決定しました。
その際、DigiCertの手厚いサポートを受けて、スムーズなCloudflareの導入に成功しています。
Cloudflareを導入した結果、JCBはCDNやDDoS攻撃対策に要するコストの最適化に成功し、ビジネスにリソースを注入しやすい体制を構築しています。
DeNA|リモートワーク用にCloudflareで信頼できる接続を実現
さまざまな事業を展開するDeNAグループは、リモートワークを実施していたものの、VPN接続に問題を抱えていました。
問題の解決のため、DeNAグループはCloudflare Accessを導入しています。
Cloudflare AccessはCloudflareのITセキュリティモデルであるZTNA(Zero Trust Network Access:ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス)です。
Cloudflare AccessはVPNを使わずに高速かつ安全性の高い接続を可能とします。
Cloudflare Accessの導入により、DeNAは問題解決にかかる時間を約82%削減しています。
さらに以前利用していたVPNでは解決できなかった問題が解決できたり、セキュリティ性の強化に成功したりするなど、さまざまな効果を得られました。
Money Forward|セキュリティ対策にCloudflareを活用
Money Forwardは金融機関や法人・個人に向けてSaaSなどのサービスを提供する企業です。
Money Forwardはユーザー数や製品ポートフォリオの増大に伴い、セキュリティツールやパフォーマンスツールの強化を課題としていました。
Money ForwardはCloudflareのアプリケーションとWAFを導入し、理想的なセキュリティを獲得しています。
さらにCloudflareを活用し、ドメインとサブドメインの膨大なポートフォリオの管理を効率化しました。
Cloudflareを導入する5つのメリット

Cloudflareには、以下のようなメリットが期待できます。
- Webサイトの表示速度を改善できる
- 設定や導入が簡単にできる
- 充実した機能でUXの向上が期待できる
- 無料でも導入できる
- Webサイトのセキュリティを強化できる
Cloudflareのメリットを把握すれば、導入時に得られる効果のイメージを具体化できます。
Webサイトの表示速度を改善できる
Cloudflareなら、Webサイトの表示速度の改善が可能です。
Cloudflareはエッジネットワークによって、サーバーの負担を減らしつつ、表示速度を改善できます。
Webサイトにおいて、表示速度は重要な要素です。
表示速度はSEOの評価を下げるだけでなく、ユーザーの離脱率を上げる原因になります。
Cloudflareで表示速度を改善できれば、ユーザーがより長くWebサイトに留まり、さまざまなコンテンツや記事をチェックする可能性が高まります。
設定や導入が簡単にできる
Cloudflareは設定や導入が簡単にできる点も魅力です。
CDNサービスのなかには、設定や導入に手間がかかるものもありますが、Cloudflareは標準設定でも十分効果を発揮します。
さらにCloudflareは日本語表示が完備されているうえに、難解な専門用語がない簡素なテキストで説明してくれます。
そのため、設定や導入に数分程度しかかかりません。
CDNを初めて導入する企業にとって、設定や導入のしやすさは大きなメリットです。
充実した機能でUXの向上が期待できる
Cloudflareには充実した機能があるため、UXの向上が期待できます。
特にCloudflareの機能で有用なのは画像変換ツールとオンライン待機室機能です。
画像変換ツールは画像のリサイズや最適化をCloudflare内で実施できる機能です。
Webサイトで表示される画像を適切な状態にすることにより、表示速度を改善できます。
オンライン待機室機能は、アクセスが集中した際に一時的にリクエストを制限し、ユーザーをオンライン待機室(仮想キュー)に入れる機能です。
ユーザーのアクセス過多によるサーバーのパンクを防止できます。
Cloudflareの機能はいずれもUXの向上が期待できる効果があるものです。
Webサイトの快適な状態を常に維持することにより、より多くのユーザーがアクセスしやすい状況を構築してくれます。
無料でも導入できる
Cloudflareは無料でも導入が可能です。
詳細は後述しますが、Cloudflareには複数の料金プランがあり、なかには無料で利用できるプランがあります。
有料プランと比較すると機能面で制限はありますが、無料プランも十分ビジネスに活用できます。
無料プランは、Cloudflareの使用感や機能を最初にチェックするうえで有用です。
有料プランへの切り替えも手軽にできるので、本格的な導入もスムーズに実践できます。
Webサイトのセキュリティを強化できる
Cloudflareを導入すれば、セキュリティのさらなる強化が可能です。
デフォルトのセキュリティ対策でも、Cloudflareは一般的なファイアウォールでは対処できない高度なサイバー攻撃からもWebサイトを保護し、常に最新の脅威に対応するためのアップデートが提供されます。
Cloudflareの3つのデメリット

Cloudflareは優れたツールである一方、以下のようなデメリットに注意しなければなりません。
- ダウンするとWebサイトが停止する
- 知識がないと運用が難しくなる
- WordPressで利用すると不具合を起こすリスクがある
スムーズに運用するためにも、それぞれのデメリットをあらかじめ把握しましょう。
ダウンするとWebサイトが停止する
Cloudflareは、ダウンするとWebサイトが停止するリスクがある点には注意しましょう。
Cloudflareでは、すべてのWebサイトがCloudflareを経由して表示されるため、万が一障害が発生すれば、たとえサーバー側に問題がなくとも、閲覧ができなくなります。
Cloudflareでは過去にデータセンターに障害が発生した際、ユーザーのWebサイトが一部アクセスできなくなったことがありました。
ユーザーの大半に影響が及ぶような障害は発生していなかったものの、同様の事態に備える必要はあります。
知識がないと運用が難しくなる
Cloudflareはユーザー側の知識が不足していると運用が難しくなります。
Cloudflareはキャッシュルールを適切に設定しなければ、不具合が発生するリスクがある点には注意が必要です。
キャッシュルールの設定をミスすると、管理画面など非公開の情報がユーザーに開示されてしまうケースがあります。
また、機能の最適化やDNSの設定はある程度の知識が必要です。
デフォルトでもCloudflareは利用できますが、より良く運用するなら、ベンダーに相談して知識を身に付けましょう。
WordPressで利用すると不具合を起こすリスクがある
CloudflareをWordPressで利用すると、不具合が起こるリスクがあります。
Cloudflareのキャッシュルールを適切に設定していない状態だと、WordPressにログインしたうえでサイトを閲覧すると、管理画面などがユーザーに表示される場合があります。
WordPressでCloudflareを利用する際は、ページルールで管理画面やプレビュー画面のキャッシュを無効にしておきましょう。
Cloudflareの使い方

Cloudflareは以下の手順で使用します。
- アカウントを作成する
- 初期設定を行う
- クイックスタート設定を行う
それぞれの手順について、順番に解説します。
アカウントを作成する
まずはCloudflareの公式サイトにアクセスし、アカウントを作成しましょう。
アカウントはメールアドレスとパスワードを設定するだけで完了します。
初期設定を行う
アカウントを作成したら、初期設定を実施しましょう。
初期設定の手順は以下のとおりです。
1.ダッシュボードにアクセスし、「サイト追加」をクリック
2.サイトドメインを入力する
3.料金プランを選択する
4.DNS設定を行う(通常利用なら設定は不要)
5.ネームサーバーの変更画面に従い、ドメイン管理サイトのネームサーバーを画面の指示に従って変更する
上記の初期設定が完了したら、クイックスタート設定に移ります。
クイックスタート設定を行う
クイックスタート設定の手順は以下のとおりです。
1.「始める」のボタンを押す
2.HTTPSの自動リライトをONにして保存
3.「常にHTTPSを使用」をONにして保存
4.Auto Minify(サイト表示の最適化)のすべての項目にチェックを入れて保存
5.Brotli(コンテンツの圧縮機能)をONにして保存
6.設定内容を確認したら終了
クイックスタート設定が完了し、ネームサーバーが反映されれば、ドメインがアクティブになります。
Cloudflareの料金プラン

Cloudflareの料金プランは以下のとおりです。

参照:アプリケーションサービス 料金設定|Cloudflare
無料で利用できるFreeは、一部の機能に制限こそありますが、CDNやWAFなど、Cloudflareの重要な機能を利用できます。
Cloudflareを導入する際の4つのポイント

Cloudflareを導入するなら、以下のポイントを意識しましょう。
- 導入すべきWebサイトか判断する
- キャッシュクリアを定期的に行う
- 予備のDNSサービスを用意する
- ノウハウを持つ人材を確保する
いずれもCloudflareをスムーズに導入するうえで重要なポイントです。
導入すべきWebサイトか判断する
Cloudflareを導入すべきWebサイトか判断することは、費用対効果を検討するうえで重要です。
基本的にCloudflareはあらゆるWebサイトでの利用が推奨されていますが、特に以下のようなWebサイトは導入を積極的に検討しましょう。
- 高トラフィックやアクセス数が多いWebサイト
- 画像や映像のコンテンツが多いWebサイト
- 個人情報を多く扱っているECサイトのようなWebサイト
上記のようなWebサイトはCloudflareによって読み込み速度の改善や、セキュリティの強化が期待できます。
キャッシュクリアを定期的に行う
先述したように、Cloudflareはキャッシュクリアを定期的に実施することが不可欠です。
キャッシュ設定を最適化していないと、Webサイトの更新が反映されなかったり、読み込み速度が遅延したりします。
特にWordPressで運営するWebサイトにCloudflareを導入する際は、一層注意しましょう。
予備のDNSサービスを用意する
Cloudflareは障害が起こるとWebサイトが閲覧できなくなるリスクがあるため、予備のDNSサービスを用意しておくことがおすすめです。
予備のDNSサービスがあれば、Cloudflareに障害が発生してもWebサイトにアクセスできます。
ノウハウを持つ人材を確保する
Cloudflareを適切に運用するなら、ノウハウを持つ人材を確保しましょう。
Cloudflareは設定や導入が簡単ですが、より良く運用するにはノウハウが不可欠です。
Webサイトを運用する従業員には、Cloudflareのノウハウを学ばせ、最適な運用ができるようにしておきましょう。
よく比較されるCDNサービス
本章では、Cloudflareとよく比較されるCDNサービスを紹介します。
Cloudinary

出典:Cloudinary
Cloudinaryは、画像や動画といったメディアコンテンツをCDNにより高速に配信できるサービスです。
CDNのほか、クラウドのAI(人工知能)機能などにより、数百万点の製品画像やビデオをサポートし、Webパフォーマンス向上に貢献します。
特に、メディアコンテンツを多用するECサイトに効果的です。
Amazon CloudFront

Amazon CloudFrontは、AWSが提供するCDNサービスです。
600以上の配信拠点に対して、自動化されたネットワークマッピングと高度なルーティング機能を適用することで、通信遅延を最小化します。
またセキュリティ面では、AWS Shield Standardを活用すると、追加費用無しでDDoS対策を強化できます。
関連するAWSサービスと容易に連携できるため、AWS環境で構築されたWebサイトにおすすめです。
Akamai

出典:Akamai
Akamaiは、世界130カ国以上に4,200以上の拠点を展開する業界最大級のCDNプロバイダーです。
大規模なトラフィックにも対応可能なインフラと24時間対応のサポートを提供し、DDoS・DNS攻撃対策や不正利用対策など、企業向けの高度なセキュリティを実現しています。
Akamaiは、大規模なWebサイトやエンタープライズ向けのサービスに適したCDNです。
Imgix

出典:Imgix
Imgixは、画像に特化したCDNサービスで、リアルタイムの画像処理と最適化機能を備えています。
世界中に分散されたCDNネットワークを活用し、画像の高速配信だけでなく、リサイズやクロップ、フォーマット変換などの処理をURL上のパラメータ指定のみで実現できる点が特徴です。
開発者の実装負荷を軽減しながら、サイト全体のパフォーマンスを向上させたいWeb開発チームに最適です。
またImgixは、Cloudflareと併用されるケースもあります。jsやcssの配信をCloudflareで行い、画像や動画の配信はImgixで行うというような実装です。詳細はぜひお問い合わせください。
まとめ Cloudflareを活用してWebサイトをレベルアップしよう

CloudflareはWebサイトの表示速度の改善や、セキュリティ強化を実現できるCDNサービスです。無料プランも提供されているため、コストを抑えながら導入効果を検証できます。
特にECサイトなど個人情報の取り扱いが多かったり、アクセスが集中するサイトであれば、Cloudflareは高い投資対効果が期待できます。
Cloudflareは継続的なアップデートを行っており、機能の改善や障害の防止などにも力を入れています。
より安定的に運用できるCDNを探している方は、ぜひチェックしてみてください。
また、Webサイトの表示速度でお悩みの方は弊社の画像最適化サービス「Imgix」もご検討ください。日本経済新聞や一休.comといったサイトのスピード改善に活用いただいています。
