Webサイトの表示速度は、ユーザー体験やSEOなどにおいて重要な要素です。ページの読み込み速度が遅いとユーザーの離脱率が上がり、収益や検索順位に悪影響を及ぼします。
そこで活用できるのが、Amazon Web Services(AWS)が提供する「CloudFront」です。CloudFrontは、世界各地のエッジロケーションを利用してコンテンツを高速に配信し、サーバー負荷を軽減しながら安定した運用を実現します。
本記事では、CloudFrontの仕組みや導入手順について詳しく解説します。
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CloudFrontとは

CloudFrontとは、静的コンテンツや動的コンテンツを迅速かつ安全に配信できるCDNサービスです。
CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)は、世界各地に分散されたサーバーネットワークを活用し、ユーザーにもっとも近い場所からコンテンツを提供します。
特に、動画や画像などの大容量コンテンツを扱うサイトでは、読み込み速度が遅いとユーザー離脱の原因となるからです。このような課題を解決するためにはCDNを活用して、コンテンツ配信の最適化を行うことがおすすめです。
CloudFrontの仕組み

CloudFrontは、オリジンサーバーとエッジロケーションの連携によって高速コンテンツ配信を実現しています。オリジンサーバーは、Webサイトの元となるコンテンツを保管している場所であり、Amazon S3、EC2、独自サーバー(カスタムオリジン)などが該当します。
また、CloudFrontは世界中に分散したエッジロケーション(サーバー)を持っており、ユーザーのリクエストを処理する最適なサーバーを選択してコンテンツを提供するため、物理的距離を問わず高速なデータ転送を実現しています。
具体的な仕組みは以下のとおりです。
- ユーザーがWebサイトにアクセスすると、最寄りのエッジロケーションがリクエストを処理する
- エッジロケーションにキャッシュがある場合、即座にコンテンツを配信する
- キャッシュがない場合はオリジンサーバーから取得し、エッジロケーションに転送・配信する
上記により、データ転送速度の向上とコスト削減が実現します。
CloudFrontの主な活用事例

ここからは、CloudFrontの主な活用事例を4つ紹介します。
Kiswe
スタートアップ企業であるKisweはCloudFrontを活用して、756,000人の視聴者を対象としたBTSコンサートを開催しました。本コンサートは世界初の大規模イベントであり、190ヵ国以上で開催されたのが特徴です。その結果、世界最大のライブ仮想コンサートとしてギネス世界記録を樹立しています。
参考:https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/Kiswe-Case-Study/
PBS
公共放送サービスであるPBSは、CloudFrontのエラー発生率が他のCDNより低いことに気付き、システムの導入を決めました。さらに、Amazon S3の使用量を増やすことで、動画ストリーミングのパフォーマンスの改善が実現しています。現在、PBSはほぼすべてのストリーミングビデオをAmazon CloudFrontを通じて配信しています。
参考:https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/pbs/
Nextdoor
サンフランシスコで設立されたNextdoorは、地域の方々のプライベートソーシャルネットワークです。コミュニティ内では、地域パーティーのお知らせやおすすめのベビーシッター情報、不審な行動に関する警告までさまざまなコンテンツを配信しています。
CloudFrontを活用することで、コンテンツ配信の高速化とソフトウェアビルドのデプロイの迅速化を実現しています。
Intuit Mint
Intuit Mintは、米国とカナダで600万人以上に利用されている無料の個人向け財務管理サービスです。顧客の銀行口座やクレジットカード、請求書などの金融情報を結び付けて、情報の一元化を実現しています。
Intuit Mintは、Webサイトやその他のウェブアセットの提供を高速化するためにCloudFrontを使用してコンテンツを配信しています。また、セキュリティ体制が整っていることから安心して活用できるのも魅力の一つです。
参考:https://aws.amazon.com/jp/cloudfront/customers/
CloudFrontにおける4つの特徴

CloudFrontの主な特徴は、以下の4つです。
- 読み込み時間の短縮
- リクエスト量に応じて自動スケール
- セキュリティ制度の充実
- 動的コンテンツ対応
それぞれについて解説します。
1.読み込み時間の短縮
CloudFrontは世界各地に配置されたエッジロケーションを活用し、ユーザーにもっとも近いサーバーからコンテンツを配信します。この仕組みにより、画像や動画などの静的コンテンツの表示速度を大幅に向上させることが可能です。
特に、ECサイトでは表示速度の遅さがコンバージョン率の低下に直結します。CloudFrontを導入することで、ユーザーエクスペリエンスの向上にも貢献し、売上アップにつながるケースも少なくありません。
2.リクエスト量に応じて自動スケール
Webサイトは時期やイベントなどによって、急激にトラフィックが増加することがあります。CloudFrontはこのような変動に対処するため、自動スケーリング機能を備えています。
突発的なアクセス集中時でもサーバー負荷を適切に調整し、追加のインフラ投資なしで大量のリクエストを処理することが可能です。これにより、運用コストを抑えつつ、安定した配信環境を維持できます。
3.セキュリティ制度の充実
CloudFrontは、セキュリティ面でも優れた機能を備えています。AWS Shieldとの連携によりDDoS攻撃を防ぎ、AWS WAFを活用してアクセス制御を強化することで、不正なアクセスからWebサイトを保護することが可能です。
さらに、SSL/TLS暗号化のサポートにより、データの送受信を安全に行えることから、セキュリティ対策を徹底する企業にとって信頼性の高い選択肢となるでしょう。AWS Certificate Managerとの統合により、証明書の管理を自動化し、セキュリティ設定をスムーズに運用できる点も魅力の一つです。
4.動的コンテンツ対応
一般的にCDNは静的コンテンツの配信に特化していますが、CloudFrontは動画ストリーミングやAPIレスポンスのような動的コンテンツにも対応しています。これは、リアルタイムで更新されるコンテンツを迅速に処理し、スムーズなデータ通信を実現するための重要な要素です。
例えば、ライブ配信やインタラクティブなWebアプリケーションでは、動的コンテンツの高速な処理が不可欠です。CloudFrontの動的コンテンツ対応により、ユーザーの待ち時間を減らし、より良い体験を提供できます。
これらの特徴により、CloudFrontは単なるコンテンツ配信だけでなく、Webサイト全体のパフォーマンス、セキュリティ、ユーザー体験を総合的に向上させる基盤として機能します。
CloudFrontの3つのデメリット

CloudFrontには数多くのメリットがあるものの、導入時はデメリットも把握しておかなければいけません。具体的な注意点は、以下のとおりです。
- キャッシュ管理が難しくなる場合がある
- 初期設定が複雑である
- 使い方によってはコスト面の負担が大きい
それぞれについて解説します。
1.キャッシュ管理が難しくなる場合がある
CloudFrontのキャッシュ機能はオリジンサーバーの負荷軽減と配信速度向上に役立ちますが、設定を誤ると問題が生じます。
例えば、キャッシュの更新タイミングを誤ると、古いコンテンツがユーザーに表示され続け、最新の情報が反映されないケースが発生します。特に更新頻度の高いページでは、キャッシュの有効期間設定を慎重に行い、必要に応じて自動的にキャッシュを無効化する仕組みを構築しましょう。CloudFrontが提供するキャッシュポリシーテンプレートを活用すれば、多くの一般的なケースに対応できます。
2.初期設定が複雑である
CloudFrontの導入プロセスは、他のCDNサービスと比較して設定項目が多く、初期構築に時間と手間がかかります。特にAWSの他サービスとの統合を行う場合、IAM(アクセス管理)の設定やディストリビューションの作成、オリジンの選定など、細かい設定が必要です。
また、CloudFrontの動作を最適化するためには、適切なキャッシュポリシーやルール設定を行う必要があり、専門的な知識が求められます。つまり、導入時に十分な検証を行い、最適な環境を構築するための計画が不可欠です。
3.使い方によってはコスト面の負担が大きい
CloudFrontの料金体系は従量課金制であり、トラフィック急増時には予想外のコストが発生することがあります。
特に動画配信といった大量のデータを扱うサービスでは、CloudFrontの利用料が他のCDNと比較して高額になる可能性があります。コスト管理には、AWS予算アラートの設定、圧縮設定の最適化、地域別料金を考慮した設計が有効です。また、無料利用枠(月間1TB)を最大限活用するための静的/動的コンテンツの適切な分離や、長期利用の場合は予約料金モデルの検討も重要です。
CloudFrontでコンテンツを配信する方法

CloudFrontを利用してコンテンツを配信するには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。ここからは、CloudFrontを活用したコンテンツの配信方法を紹介します。
1.AWSアカウントへのサインアップを行う
CloudFrontを利用するためには、AWSアカウントを作成する必要があります。AWSの公式サイトにアクセスし、アカウント登録を行いましょう。
登録の際には、基本情報の入力や支払い情報の設定、本人確認のステップがあります。AWSは従量課金制のため、アカウント作成時点で課金されることはありません。なお、サインアップが完了すると確認メールが送られます。
2.管理アクセスを持つユーザーを作成する
AWSアカウントを作成したら、IAMを利用して管理アクセス権を持つユーザーを作成します。IAMを使うと各ユーザーのアクセス権限を細かく設定できるため、セキュリティ管理がしやすくなります。
まず、IAMアイデンティティセンターを有効にし、ユーザーに管理アクセスを付与しましょう。管理アクセス権を持つユーザーとしてサインインしたら、必要に応じて限定権限ユーザーを作成します。
3.CloudFrontへのアクセス方法を選択する
CloudFrontへのアクセス方法は複数あり、利用目的や環境に応じた適切な選択が重要です。主に、以下のツールを用いて管理・操作を行うことが可能です。
- AWS Management Console:GUIベースの操作画面で、初心者に最適
- AWS SDK:プログラムからAWSサービスを操作するための開発者向けツール
- CloudFront API:プログラムからCloudFrontサービスにアクセスするための方法
- AWS CLI:コマンドラインからAWSサービスを操作するためのツール
- Windows PowerShell:Windowsユーザー向けのコマンドライン環境
ご自身の技術レベルや作業内容、使用環境に合わせて最適なアクセス方法を選択されることをおすすめします。
4.Amazon S3バケットを作成する
CloudFrontを通じてコンテンツを配信するために必要なAmazon S3バケットを作成します。S3バケットはファイルを格納するストレージであり、CloudFrontのオリジンサーバーとして利用されます。具体的な手順は、以下のとおりです。
- AWS Management Consoleにサインインし、Amazon S3 コンソールを開く
- hello world ウェブページをダウンロードする
- 解凍して、CSSフォルダとindexファイルを使いやすい場所に保存する
- 「バケットを作成」を選択する
- 「Amazon Simple Storage Service ユーザーガイド」の「汎用バケットの命名規則」に準拠した一意のバケット名を入力する
- 地理的に近いAWSリージョンを選択する
- 「バケットを作成」を選択する
5.コンテンツをアップロードする
S3バケットを作成したら、実際のWebコンテンツをアップロードします。アップロードの際は、フォルダ構造を整理し、適切なファイル名を設定すると管理しやすいです。具体的な手順は、以下のとおりです。
- 「汎用バケット」セクションで新しいバケットの名前を選択する
- 「アップロード」を選択する
- 「アップロード」ページでCSSフォルダとindexファイルをドロップ領域内にドラッグする
- 「アップロード」を選択する
6.ディストリビューションを作成する
次に、オリジンアクセスコントロール(OAC)でAmazon S3 オリジンを使用するディストリビューションを作成しましょう。OACは、認証済みのリクエストをAmazon S3 オリジンに安全に送信する際に必要です。具体的な手順は、以下のとおりです。
- CloudFront コンソールを開く
- 「ディストリビューションの作成」を選択する
- 「オリジン」の「オリジンドメイン」で、S3 バケットを選択する
- 「オリジン」の「オリジンアクセス」で「オリジンアクセスコントロール設定(推奨)」を選択する
- 「オリジンアクセスコントロール」で「新しいOACを作成」を選択し、作成をクリックする
- 必要に応じてウェブアプリケーションファイアウォール(WAF)の設定を行う
- 「ディストリビューションの作成」を選択する
- 「S3 バケットポリシーを更新する必要があります」バナーが表示されたら「ポリシーをコピー」を選択する
- S3バケットのアクセス許可設定画面に移動するリンクを選択する
- 「バケットポリシー」で「編集」を選択する
- 「ステートメントを編集」フィールドでコピーしたポリシーを貼り付ける
- 「Save changes」をクリックする
- CloudFrontコンソールに戻り、新しいディストリビューションの「詳細」セクションを確認する
- ディストリビューションのデプロイが完了すると「最終変更日」フィールドが「デプロイ中」から日付と時刻に変わる
- CloudFrontがディストリビューションに割り当てるドメイン名を記録する
7.ドメイン名とメインページを組み合わせる
CloudFrontからコンテンツにアクセスするには、ディストリビューションのドメイン名とメインページを組み合わせる必要があります。ディストリビューションのドメイン名はディストリビューション作成時に記録しています。

CloudFrontの料金体系
CloudFrontの料金体系は従量課金制を採用しており、使用したデータ転送量やリクエスト数に応じて料金が発生します。利用量に合わせて最適なコスト管理が可能です。
なお、AWSの無料利用枠の一部として、以下を常時無料で利用できます。
- 1ヵ月あたり1TBのインターネットへのデータ転送
- 1ヵ月あたり1,000万件のHTTPまたはHTTPSリクエスト
- 1ヵ月あたり200万件のCloudFront関数呼び出し
- 1ヵ月あたり200万回のCloudFront KeyValueStoreの読み取り
- 無料のSSL証明書
- 制限なし、すべての機能が利用可能
具体的なコスト例については、実際の利用状況や設定によって大きく異なる可能性があるため、AWS Pricing Calculatorなどのツールを使用して個別に試算することが推奨されます。
実際の運用においては、AWS Cost Explorerなどのツールを活用してコストを監視したり、AWS社のソリューションアーキテクトに相談したりすることで、最適な構成とコスト管理を実現できます。
参考:https://aws.amazon.com/jp/cloudfront/pricing/
よく比較されるCDNサービス
本章では、Cloudflareとよく比較されるCDNサービスを紹介します。
CloudFlare

出典:Cloudflare
Cloudflareは、世界335以上の大規模なネットワークを活用し、静的・動的コンテンツの高速配信を実現するCDNサービスです。
無料プランでもDDoS攻撃対策やWAF、SSL証明書などのセキュリティ機能が充実しており、中小企業のコーポレートサイトやECサイトでの導入に適しています。
Cloudinary

出典:Cloudinary
Cloudinaryは、画像や動画といったメディアコンテンツをCDNにより高速に配信できるサービスです。
CDNのほか、クラウドのAI(人工知能)機能などにより、数百万点の製品画像やビデオをサポートし、Webパフォーマンス向上に貢献します。
特に、メディアコンテンツを多用するECサイトに効果的です。
Akamai

出典:Akamai
Akamaiは、世界130カ国以上に4,200以上の拠点を展開する業界最大級のCDNプロバイダーです。
大規模なトラフィックにも対応可能なインフラと24時間対応のサポートを提供し、DDoS・DNS攻撃対策や不正利用対策など、企業向けの高度なセキュリティを実現しています。
Akamaiは、大規模なWebサイトやエンタープライズ向けのサービスに適したCDNです。
Imgix

出典:Imgix
Imgixは、画像に特化したCDNサービスで、リアルタイムの画像処理と最適化機能を備えています。
世界中に分散されたCDNネットワークを活用し、画像の高速配信だけでなく、リサイズやクロップ、フォーマット変換などの処理をURL上のパラメータ指定のみで実現できる点が特徴です。
開発者の実装負荷を軽減しながら、サイト全体のパフォーマンスを向上させたいWeb開発チームに最適です。
またImgixは、CloudFrontと併用されるケースもあります。jsやcssの配信をCloudFrontで行い、画像や動画の配信はImgixで行うというような実装です。詳細はぜひお問い合わせください。
まとめ CloudFrontを活用すればデジタルコンテンツを最適化できる

CloudFrontはAWSが提供するCDNサービスであり、高速で安全なコンテンツ配信を可能にするシステムです。オリジンサーバーとエッジロケーションを活用して、読み込み速度の向上やサーバー負荷の軽減、コスト削減などを実現します。今回紹介した配信方法を参考に、ぜひ活用してみてください。
特に画像や動画が多いECサイトでは、Imgixを活用するのもおすすめです。Imgixは、Webやアプリのビジュアル体験を向上させる画像・動画最適化プラットフォームであり、処理した画像の表示速度を向上させることができます。Webコンテンツの表示速度をアップさせたい方は、ぜひ検討してください。
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