かつて、ビジュアルを使ったストーリーテリングには、時間や予算、人手といった明確な限界がありました。
今、AIによってそのルールが書き換えられようとしています。アイデアをかたちにするスピードも柔軟性も飛躍的に向上し、パーソナライズも容易になりました。
しかしこの変化の中で、私たちが見落としてはならないのが「責任ある活用とは何か?」という問いです。
先日行われたFireside Chatでは、テクノロジー・ジャーナリストのConnie Guglielmo氏とimgixのCEO Chris Zachariasが、AIによって変わりゆくクリエイティブの世界と、それをどう捉えるべきかについて語りました。
以下は、AI時代のストーリーテリングにおいて欠かせない5つの視点です。
1. ひとつの画像から、無限の可能性を引き出す
AIによって最も大きく変わったのは、「ひとつのアセットが持つ価値」の広がり方です。
背景を変える、フレームを拡張する、動きをつける、まったく新しいシーンを合成する──。
写真はもはや“静的な素材”ではなく、“動的なストーリーの起点”となります。
Zacharias氏は、1枚のカエルの写真が、無数のバリエーションとして展開される様子を例に挙げました。
こうした生成力によって、制作チームは少ないリソースで多くの選択肢を生み出し、ユーザーごとに最適なビジュアル体験を届けることが可能になります。
スピードと拡張性、そして一貫したブランド表現を両立できる──それが、AIを活用する最大のメリットです。
2. 人の監修があってこそ、資産は本当の価値を持つ
効率性が高まる一方で、Guglielmo氏は「人間の関与が不可欠」だと強調します。
AIは提案や自動化は得意でも、ブランドの個性や感情を読み取ったり、倫理的な判断を下したりすることはできません。
完璧なAIは存在せず、時に“違和感のある出力”や“文脈にそぐわない表現”も生まれます。
だからこそ、人が意思決定のループに入ることが、ブランドの信頼性を守り、文化的・法的なリスクを回避するために重要です。
AIは人間の創造性を奪うのではなく、拡張するもの。繰り返し作業から人を解放し、本質的なストーリーテリングに集中できる環境をつくることが可能です。
3. 革新と責任のバランスを取る
AIは、特定のビジュアルスタイルを模倣することも可能です。アニメ調、著名人の顔、既存ブランドの世界観──その表現力は非常に強力です。
しかし、そうした表現を**“無断で”“速さ重視で”使うこと**にはリスクがあります。著作権、所有権、ブランドイメージの毀損につながる可能性があるからです。
企業としては、ライセンス済みの素材や自社オリジナルのコンテンツを活用し、明確なAI利用ガイドラインを設けることが望まれます。
Guglielmo氏は「できるからといって、やるべきとは限らない」と述べ、倫理的なプレイブックと透明性への姿勢の重要性を強調しました。
4. AIを使ったことは、正直に伝える
フェイク画像や偽情報によって、視覚コンテンツへの信頼は揺らいでいます。
AIが生成・加工した画像について、その事実をどこまで伝えるべきか──いまだ明確なルールはありませんが、自ら開示する姿勢こそが信頼構築への第一歩です。
たとえば:
- AI活用を明示したラベリング
- 透かしの追加
- AI画像の生成元・使用目的を簡単に確認できる仕組み
DoveのAIガイドラインやウクライナのAI広報官の事例は、こうした透明性の好例として紹介されました。
「騙さない」ことが、ブランドの未来を守ることにつながります。
5. 真の創造性は、人から生まれる
AIは“新しいアイデア”を生み出すわけではありません。
既存の要素を再構成し、パターンを抽出して出力しているに過ぎません。
想像力、感情、ビジョン──それらは、依然として人間の領域です。
Zacharias氏は「AIによって、創造の“接地面”が広がった」と表現しました。
これまで不可能だったアイデアも、AIと組み合わせることで実現の射程に入ります。
AIを脅威と見るのではなく、創造性を加速するパートナーとして捉える視点こそが、これからのクリエイターに求められています。
AIとビジュアルストーリーテリングの今と未来を語る対談を公開中
ビジュアルメディアの未来は、すでに動き出しています。
そのチャンスとリスクの両方を理解することが、先を見据えたマーケティング・表現戦略につながります。
Connie Guglielmo氏とChris ZachariasによるFireside Chatでは、実際の事例、倫理的な視点、そして今すぐ活かせるヒントが満載です。
今すぐご覧ください。
How AI Is Shaping Storytelling and Visual Media